夢と現実と臆病と

私は今まで、自分の夢を話すことがありませんでした。

理由は2つ。

親にこれ以上負担をかけないように、早くいい会社に就職して、早く自立することが正しいことだと思っていたから。そしてなにより、笑われるのが怖かったから。

あの嘲笑う顔が、見下す目が、夢を否定する言葉が怖かった。

だから私は【夢】じゃなくあくまで【趣味】として、小説を書きました。絵を描きました。旅をしました。

でも諦めきれなかった。

就活をしなきゃいけない。でもしたくない。やりたいことがある。でもそれを誰かに言うのは怖い。

 

 

そんな矛盾した心を秘めながらの生活は、自分の首を絞めるくらいに苦しかった。

 

もちろん今は、そんな矛盾はありません。じゃあいつその矛盾はなくなったのか。

実はこの出来事のお陰で今の私がいるのですが、これを小説チックに書いたら面白いんじゃないかな〜、と笑

 

なのでここからは、少し書き方を変えてみようと思います。

 

では、こう書き始めるとしましょうか

 

――私はちょうど一年前、彼と知り合った

仮に名前をNとしようか。知り合った経緯は省略するが、私より一つ歳上であったNはその年の春に、海外で一人旅をしたと聞く。国内での一人旅は経験のある私にとってNは、一人の旅仲間であり、そして私の知らない世界を知っている凄い人……という認識から、憧れの存在であった。

私より一年しか長生きしていないのに、あの人は私よりもずっとずっと高みにいる。

そんな感覚。

ただただ格好良かった。素敵だった。

もしかしたら私は、Nに多少なりとも恋慕のようなものを抱いていたのかもしれない。今でもそれは、そうだったのかもしれないという程度で確信があるわけではない。

だが確かに彼は、私にとって特別な存在だった。憧憬ともいえるだろうか。いつしか私は、彼に認められたいと思うようになった。

この時からだ。私にとっての旅という概念が、日本という枠を突き破ったのは。

私はNから、旅の話を聞いた。

私の知らない世界を歩いたNの話は未知で、それこそ異世界の話を聞いている気分になった。

胸の高鳴りを感じる。好奇心が掻き立てられ、体が熱くなる。

知りたい

そう強く思った。

こんな小さな籠に閉じこもっている場合じゃない。

見たい。感じたい。知りたい。広げたい。

完全に興奮状態になっていた私は、Nにこう言った。

「私もいつか、海外に行きたいです」

今思えばこの「いつか」も、私の臆病の現れだったのだろう。

そう、私は臆病だったのだ。

Nによって私は異世界を知った。そしてそれをこの目で見たいと思った。自分の世界を広げたいと感じた。

だけどそれを親に言う勇気を、私は持ち合わせていなかった。

ここでもまた、私は夢を見れなかった。

ここでもまた、私は自分の首を絞めた。

ここでもまた、私はワタシから逃げた。

 

そしてNは私の前からいなくなってしまった。

私が一歩踏み出せないでいる間にも、彼は前へ前へと進んでいたのだ。

彼が最後にこう言ったのを覚えている

 

「口だけ」

 

その言葉が私にとっての転機となるのだが、それはまた明日話すとしよう。

今日はここまで。